15. 上手に弁護士とつきあうコツはありますか?
「依頼者と弁護士との関係は登山者とそのガイドのようなものだ。」というのが私の持論です。どういう意味かと言いますと、まず、「事件」という山を一緒に登って差し上げることはできても、代わりに登る…ということはできません。つまり、「弁護士にまかせきり」では困るのです。もちろん、プロとしてのできるだけ「安全」で「負担の少ない」方法を考え、案内させていただきますが、あくまで依頼された方自身が事件の当事者であるとの認識は持っていただく必要があります。その上、大事なことは、いかに依頼者の皆様と弁護士との「呼吸」を合わせるか、です。人間同士のおつきあいですから、当然のことと言えば、当然のことなのですが、厳しい事件であればあるほど(登山に例えれば「山が険しければ険しいほど」)これがなかなか難しい…というのが実情です。ですから、私が皆様にお願いしたいことは、
◇弁護士を信頼する
◇知っている事実はつつみかくさず弁護士に話す
◇希望(あるいは苦情)は遠慮せずに率直に言う
ということです。ここで「信頼する」というのは、弁護士の言うことを頭から信用せよ…ということではありません。弁護士とて人間ですから間違いを犯すことはあります。しかし、弁護士が「ご依頼いただいた方のために全力を尽くそう」「決して信頼を裏切るまい」という気持ちを持っていること、その点だけは信頼していただきたいのです。逆に、そういう点に不安を感じるような行動を弁護士がしたのであれば、すぐにその弁護士を解任して、別の弁護士に依頼された方が、双方にとって幸せなことだと思います。
また、弁護士が「ご依頼いただいた方のために全力を尽くそう」としても、事実関係を正確に把握しなければ適切な方針を立てることができません。特に、こちらにとって不利な事情は、後からお聞きしたのでは対処できないことがあります。「敵を知り己を知らば百戦危うからず」という諺がありますが、弁護士が適切な判断を下せるよう、有利不利を問わず、知っている事実は全てお話しいただかなければなりません。
さらに、皆さんの希望や苦情はできるだけ早く、率直にお話していただきたいのです。前述のように、私は弁護士の仕事は「紛争の解決」だと考えていますが、そのためにも依頼者の方々が何を望んでおられるのかを知る必要があるのです。また、長いおつきあいの中で、私の考えややり方にご不満をお持ちになられることもあろうかと存じます。その時、初期の段階で希望(苦情)を言っていただければ、可能な限り方向を修正させていただくことができますし、それが無理な場合でも十分な説明をさせていただくことができます。それが遅れてしまうと、非常にギクシャクした関係になってしまいかねません。それがお互いにとって不幸なことは言うまでもありません。
⇒