14. 弁護士を頼めば相手をやっつけてもらえますか?
最近は少なくなりましたが、かつては事件の相手方から「弁護士なんて入れやがって!」とお叱りを受けることが多くありました。そのようなときには「いやあ、そんなことを言われると、私ら食べてゆけませんから…」と笑ってごまかしていましたが、紛争の解決に弁護士が入ることに過敏に反応する方が多いのは事実です。そして、そういった方が弁護士を依頼される場合には、逆に、「弁護士に頼んで相手をやっつけてもらおう」という過大な期待を抱いておられることが多いような気がします。しかし、犯罪の処罰を求める刑事事件は別として、通常の民事事件の場合、弁護士として相手を「やっつける」ことはできません。裁判をしても、「金を払え」という判決が出るだけで、「謝れ」という判決は出ません。私は弁護士の仕事は「紛争の解決」だと考えています。お医者さんと患者さんにとってのケガや病気と一緒で、「紛争」に苦しんでおられる方と一緒に、その紛争を「解決」して過去のものにしてしまう(苦痛を取り去る)ことこそが大事だと思っています。そして、「相手をやっつける」という姿勢は、多くの場合、紛争の解決にとってむしろ有害です。
10年も20年も裁判合戦が続くという事案の多くは、このような姿勢のために紛争がこじれてしまった例なのです。「江戸のカタキを長崎で」という言葉がありますが、「恨み」を残すような解決しかできないのは弁護士として二流…というのが私の考えです。
ただ、それは「泣き寝入り」を薦めるとか、正義に反した解決を薦めるということではありません。あくまで通すべき筋は通し、主張すべき権利は主張した上で、円満解決を目指すということです。これをするためには依頼者の方々と弁護士との間に十分な意思疎通を確保する必要があります。そのための努力を惜しむつもりはありませんので、皆様にもご理解賜りますようよろしくお願いします。
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